| クラッシャースパイダ |
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| 「アタシが惚れたオトコはさ、美しくて優しくてホントは強いだろうに、そんな事は欠片も思わせない、そんなオトコだったのさ」 その女は言いながら、懐から写真を一枚取り出し、少し頬を赤らめながら見つめていた。 道を歩けば男も女も振り返る、彼女は妖しさすらも色気に変えてしまう美女。 十人居たとするならば、恐らく九人は頷く筈。 そんな彼女が赤面してしまうような相手とは、さてどんな男なのだろう。 少し気になったのは確かだし、よければ写真を見せてくれないか、とも確かに言った。 「はん、アンタなんか逆立したってサスケの爪の先にも及ばないよ」 だからって、これじゃ寧ろ見えないから、近すぎて。 何故か勝ち誇ったかの如く彼女がふんぞり反って、鼻先に付つけられた写真。 ベリッとひっぺがして眺めたればソコに。 そうか、サスケって名前なのか、このまふまふ熊さん。 「嗚呼っ! アタシの愛しいアンタ! なめたけ星人許すまじっ!!」 この写真、どう見たって隠し撮りだよなあ… せっかくの美女なのに、熊のストーカーだなんてモッタイナイ。 彼女の故郷にあるらしい、着物とやらの民族衣装から、ほっそりとした見事な脚線美。 「この女郎蜘蛛のお七、必ず助けに行くからねっ!!」 嗚呼、その前に踏みつけてる糸の塊が潰れそうだ。 ようやくゲット出来た魔王サツマイモ、巣はブラックホール。 捕獲は困難だが珍味であるが故に、一匹売れば非常にオイシイ。 但し、活きがイイとこを蒸かすからこその珍味。 ぐえっぐえっ、なんて声だかうめきだかが聞こえてるうちに、飛び出た糸を掴んで引き寄せた。 「何すんだい、腐乱」 とりあえず、腐ってないし乱れてない。 死体みたいに言わないで欲しい、て辺りを恨みがましく視線で訴えてみる。 「ふらんそわぁず、なんて長い。腐乱ですらも釣り銭くるよっ」 それにしてもよく叫ぶ。 個室のあるシャトルで助かったな、うん。 でも何で彼女と一緒に行動するハメになったのかが、いまいちよく解らない。 「そんなの、アンタがアタシの道を邪魔したからに他ならないだろ」 だって折角のサツマイモ、欲しかったんだもん。 珍味だぞ珍味。 宇宙三大珍味の頂点、魔王サツマイモなんてそう簡単に手に入る訳がない。 しかも近年になってから、数が減ってるとかで乱獲禁止令が出たし。 捕獲が許されてるのは、正当防衛成立時のみって、そりゃ無いよ。 こんなチャンス逃して堪るかってんだ。 彼女が襲われた事にして、捕獲させて頂いた。 事実は全く逆だけど。 「アタシはさっさとサスケを助けに行きたいってのに」 サツマイモをグルグルにしてる糸は、彼女の吐き出した糸だとかで。 しかも遠く離れると消えてしまう代物らしく、そうなったからには一緒に来てもらわないと困る。 ……嗚呼、だから今一緒に居るのか、納得。 「それにさ、アンタの言う春雨星ってのは、何処にあるんだい?」 んー…このシャトル自体が限りなく光速に近いらしいし、なら多分後二年くらい? 可愛く見えないのは承知の上で、首をこてんと傾げてみせた。 「にねんっ!? 冗談も程々におしよ、そんなに時間費やせないんだから!」 な事言われても、サツマイモ持って帰らないと怖いんだよ、星の皆。 仮にも勇者が魔王を捕獲出来なくてどうすんだ、て事らしい。 勇者とは言え、どっかの星で流行ってるゲームに出てくるような、カッコイイのじゃなくて。 魔王には勇者だろう! と高らかに宣言かましてくれた、長老命名。 「早い話、サツマイモ限定の猟師じゃないさ」 いや、御も蓋もない。 けど彼女は全くもって、魔王サツマイモに興味なし。 美味いのに。 「ふん、女郎蜘蛛の餌はイイ男って、昔から決まってんだよ」 唇吊り上げて、流し目で、確かにそこらの男なら簡単かもしれない。 て事は何か、熊のサスケはもしかして獲物ッ!? 今何処に居るのか全然知らないけど、そのままずっと逃げ切って! 同じ男として、同情してもいいかな。 「ちょいと腐乱! 失礼な事お言いでないよ? サスケは熊じゃなくて立派な鵺じゃないか!!」 豊満な胸元から取り出された紙切れを、再び付つけられた。 少し顔を離してよく見れば、やっぱり隠し撮りの写真。 ただしマッパ… 野郎の裸なんて見たって嬉しくないやい。 思わず魔王を殴ったら、ぎょわっ! て悲鳴らしきが聞こえた。 ちょっとスッキリ。 「この太い尻尾、フサフサな毛、逞しい身体、嗚呼ッ!」 目の前では自分の体と写真を抱き締めて、悶えまくる彼女とか。 てか姐さん、擬態がとれかけてます。 「あ、アラヤダ毛深い節脚が…」 地球人の姿に擬態してれば、脚線美は素晴らしいのに、本体はアレだし。 じゃなくて熊は否定するのに、餌は否定しないのか、そうか。 ここはやっぱりナニガナンデモ、我が春雨星に来てもらおう。 サツマイモの捕獲も楽になるし。 見知らぬサスケくんよ、その間になめたけ星とやらを制圧するのだ! 出来る限りは足留めさせてもらうよ、男と男の約束だ。 一方的に。 「嗚呼サスケ…あんなぬめぬめテカテカからなんて、このお七姐さんがすぐさま助けだしてあげるからね」 だけど擬態を安定させてもまだ悦ってるとか、それを足留めとかかなり無謀かもしれない。 こうなったら星の皆に協力して貰おう。 と決めたその瞬間。 『機内放送です。乗客の皆様にご連絡致します』 こんな宇宙の真っ只中で、何かあったのだろうか? 彼女も悶えるのを止めて放送を聞いている。 『当シャトルは燃料補給の為、只今よりなめたけ星へと着陸致します』 ………あ、あー… チラリと盗み見た彼女の瞳は、まさしく獲物が射程に入ったハンターの如くだった事を、記録します。 ごめんよサスケとやら、アレはちょっと無理止めらんない。 狂喜乱舞の彼女なんて知りもしないシャトルクルーは、なめたけ星への着陸準備を着々と進めていくのであった。 サツマイモ、どうしよう… |
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