| 試作 ぴぃちたると |
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| カザン市街、グーリント伯爵邸。 大広間に集うきらびやかな人々は、その日夜会に招かれた事、その誘いに応じてしまった事を。 邸の主たるグーリント伯はその日夜会を開いてしまった事を。 「………うん、私が悪かった」 そう呟いてしまう程、果てしなく後悔していた。 広間中央で躍る一組の男女に。 「僕のはにぃがそんな格好するのは、かなり不本意なんだが」 「あたしだって、だぁりんにそんな姿をさせるのは物凄く嫌よ」 優雅にワルツのステップを踏みながら、周囲の視線だってなんのその。 「でも父上の御命令なんだ…はにぃ以外と躍るなんてゴメンだし」 「だぁりんがあたし以外と躍る事に比べたら、このくらい我慢できないあたしじゃないもの」 ラブラブな会話に花が咲く。 とは言え、流石上流階級の皆さま方。 会話自体でここまで後悔などするタマではない。 甘い会話に為れた方々が後悔する原因は、全く別。 「だけどね、例えどんな服を着ていたとしても、はにぃはとってもチャーミングだよ」 と微笑む、ドレスの美女。 こちらはまだ良いとしよう、言葉使いもまだ許容範囲内。 「だぁりんも、どんな服を着ていても、とっても素敵だわ」 とはにかむ、美…マッチョ。 筋肉が美しい男がワイルドにタキシードを着こなし、でも喋る言葉はお嬢さん。 顔が良い分、周囲のダメージは甚大。 しかし何時までも二人を放置するわけにもいかないと、一歩を踏み出すグーリント伯。 そして、邸の主とは思えない程の低姿勢でもって。 「失礼、レディ…」 彼が勇者と讃えられた瞬間だった。 だが勇者への道のりは遠い。 「あら、グーリント伯」 だぁりんに何かお話でも? マッチョの微笑み、追加効果は石化。 グーリント伯には渡さない、とでも言いた気に美少女改め、だぁりんことレイスミンティアの腰に腕を回す、マッチョ改めはにぃことランディゲイル。 因みに。 マッチョの微笑みバッドステータス付着律は、九十パーセントを越える。 腰に回されたランディゲイルの腕に、自分の腕を絡めながらグーリント伯を眺めるレイスミンティア。 表情は至極楽し…否、愉しそう。 「リビアン・グーリント伯爵、本日はお招き有難うございます」 美女の微笑み、追加効果は石化解除。 「あ…これはとんだ失礼を致しました」 よろしければ私とも踊って頂けますか? ランディゲイルに睨まれながらも、引き攣りそうになる頬で懸命に微笑みかける。 「せっかくのお誘いですが、わたくしにはこの…」 夜会に参加している人々が見守る中。 「ランディが居りますもの」 最早誰一人として聞いている者は居まい。 更なる笑みで迎え撃ったレイスミンティア、不自然に区切られた言葉の間に後ろから抱き締めるランディゲイルとひとつ。 キスをした。 それだけなら別に構わない。 レイスミンティアは文句なしで美人だし、ランディゲイルだってきっちりと撫でつけた長い銀髪が恨めしいくらい似合う、良い男なのに。 「もっ、だぁりんたらダイタンなんだからっ!」 頬を赤らめ、ハズカシイとボヤく姿はひたすら怖い。 これさえなければっ! 広間に居る人々の思いが一致する。 「だって僕ははにぃ一筋だからね」 「あたしだってだぁりん一筋よ?」 嗚呼、世界は二人の為に。 既に目の前に居るはずのグーリント伯ですら、眼中に無い。 「それと僕の可愛いはにぃ…ランちゃんは僕のだもの」 見せ付けてあげようと思ってね。 素敵なドレスに身を包み、サラサラと背中に流れる黒髪を、バサリと掻き上げ男らしく断言。 いっそ、漢。 対してランディゲイル、益々赤面して目もうるみ、頬に両手を当て相当照れている様子。 「レイスだって、あたしのだぁりんよ?」 あっぱれ乙女。 周囲に混乱と石化の嵐を巻き起こしたまま、色々諦めたグーリント伯の声により、その日の夜会は終了となった。 「さ、帰ろう」 当然の如く手を差し出すレイスに小さく反論する声。 「今日はあたしがだぁりんのエスコートじゃないの?」 少しスネて見せるランディなのだが。 「あぁ、そうだったね」 じゃあお願いするよと、上に向けていた掌を下にかえるレイスと。 「えぇ、任せて下さいな」 今度は笑顔でその手をとるランディに。 結局最後の最後まで、グーリント伯他出席者は後悔したままだったとか… だがグーリント伯爵は知らない。 このやりとりを今後、何度も見る羽目になる事を。 |
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